皆様、こんにちは。世間はGWの真っ只中、もしかするといつものオフィスではなく、旅行先の海外でこのコラムをご覧になっている方もいらっしゃるのでは??
さて、不動産鑑定士が行う鑑定評価の手順の中に「地域分析」という項目があるのですが、そこでは対象不動産の存する地域について、過去からの変遷、現在の利用状況、市場の需給動向、開発動向等を踏まえて将来予測を行い、「地域の標準的使用」を判定することになります。今回はその中でも「過去からの変遷」について着目してみたいと思います。
昨年公開され大ヒットとなった映画「君の名は。」、エンディングで流れるRADWINPSの「なんでもないや」という曲に出てくる「タイムフライヤー」という言葉があります。映画のイメージとぴったりハマっている言葉で好きなのですが、不動産鑑定士も日々業務において同じような体験をしています(嘘ですw)。
不動産の鑑定評価においては、対象不動産の存する地域について、主に住宅地図や航空写真を用いて過去の利用状況及び現在までの変遷を把握することで、今後どの様に当該地域が変化していくかを予測したり、土壌汚染の原因となる利用履歴が無いかということを確認しています。過去地図と現在の地図を見比べて、過去と現在を行ったり来たりしている訳です。頭の中で…。かなり苦しいですが、この作業がなかなか面白くて、場所によっては気が付くと1時間くらいあっという間に経っていることも。今回は、レポコラ愛読者の皆様にも過去地図を見てタイムフライヤー体験を共有していただければと思います。
先日、誰もが知っている梅田の一等地の評価をする機会がありましたので、そちらを題材にしたいと思います。JR大阪駅の南側に広がる「ダイヤモンド地区」と呼ばれるエリアです。北側の区域では阪神百貨店や第一生命ビルといった大型開発が早くから進んだものの、南側は木造の狭小建物が密集し、戦後の闇市の流れで不法占拠も多く、再開発に多大な時間とコストを要することとなりました。現在は再開発事業により誕生した駅前第一ビル~第四ビルや、大型のオフィスビルやホテルが建ち並ぶほか、地下街としてディアモール大阪が広がっています。現在、阪神百貨店と新阪急ビルの建替え事業が進捗中であり、将来的にも大阪を代表する業務商業エリアとして推移すると予測されます。そんなダイヤモンド地区の変遷について、昭和39年の住宅地図から見ていきたいと思います。
■現在 皆さんご存知のダイヤモンド地区。スーパーブロックが並んでいます。
■昭和39年4月 北側が少し切れていますが、現在との対比わかりますか。狭小建物が密集している様子がよくわかります。
■昭和44年2月 駅前第一ビルが竣工する前年です。先ほど(5年前)比べ変化が見られます。
■昭和46年10月 第二ビルの用地整備が進んでいます。マルビルも一部で立退きが始まっています。
■昭和51年5月 マルビルが竣工(S51.3) 第二ビル工事中 第三・第四ビル用地で立退きが進捗
■昭和55年11月 第二ビル竣工(S51.11) 第三ビル竣工(S54.9) 第四ビル工事中
■平成元年 第四ビル竣工(S56.8) 吉本ビル(ヒルトンホテル)(S61.9) 渡辺ビル(H1.4)竣工
■ 平成11年 梅田スクエアビル竣工(H7.8) DTタワーは工事中断中 イーマは駐車場
■昭和37年 航空写真(西側上空から) 写真の方がリアルに伝わりますね。
■ 昭和50年前後 航空写真(北側上空から)右端に駅前第一ビル その奥一帯は北新地
以上、住宅地図と航空写真でダイヤモンド地区の変遷を辿ってみましたが、いかがでしたか??スペースの関係もあってそれぞれの地図についてのコメントは殆ど割愛していますので、じっくり見ていただくと、色々と気付くことがあるかもしれません。面白いと感じた方は、是非プリントアウトして見比べて下さいね。
ちなみに今回関わった評価ですが、地代改定に関するもので、昨今の大幅な地価上昇を背景に地代が不相応になっていました。地主様からのご依頼でしたが、評価の結果をもとに借地人と協議を行い、大幅な増額改定となりました。不動産価格は常に変動しており、都心の商業地は上昇局面が続いています。賃借人との関係を気にして賃料増額に消極的なオーナーが多い様な気がしますが、タイミングを逃さないよう行動していただけたらと思います。その際は、我々不動産鑑定士という強い味方をご活用いただくこともお忘れなく~。