まだまだ残暑が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。「今年の夏は本当に暑いですね」って、毎年言っている気がしますが、今年はリオデジャネイロオリンピックが開催され、日本は金12個、銀8個、銅21個と大活躍だったこともあり、例年以上に熱かったように感じます。
さて、今回のコラムではオリンピックに関連して、不動産鑑定士目線でちょっと気になった「選手村のその後…」について触れてみたいと思います。
オリンピックでは選手やスタッフの滞在拠点となる選手村が整備されます。今回のリオでは8月5日から21日までの開催で最大1万8千人が宿泊できる計31棟(3,604室)のマンションが建設され、その建設費は29億レアル(約880億円)にもなるそうです。大会期間中は世界中のトップアスリートが集結するので、活気に満ちた華やかな村になると想像する訳ですが、大会終了後はどうなるのでしょうか…。
日本で開催された1964年の東京オリンピックでは、米軍居住地域だった「ワシントンハウス」跡地に選手村として「代々木本村」が設置され、総面積は約66ha、5,900人を収容する施設だったとか。そして現在は代々木公園として都民の憩いの場となっているほか、宿舎の一部が保存・展示されているそうです。
1972年に開催された札幌オリンピック冬季大会では、札幌市近郊の北海道警察学校跡地に日本住宅公団(現UR都市機構)が建設した真駒内団地が選手村として利用されています。これに合わせて地下鉄南北線が建設され、真駒内と札幌都心は約15分で結ばれています。ちなみに、現在の「UR五輪団地」は建築から40年以上が経過していますが、駅1分の立地、約43㎡で家賃は約4万円程度です。
1998年に開催された長野オリンピック冬季大会では、長野市中心部から南へ約7kmにある川中島町今井地区に長野市が建設した今井ニュータウンを借り上げて選手村が整備されています。面積は約19ha、建物23棟、1,032戸という規模だったようです。こちらは現在では市営住宅318戸のほか、県や市の教職員向け住宅等として利用されていて、市営住宅については非常に人気が高いようです。家賃は世帯収入に応じて異なりますが、1LDK~4DKで21,900円~67,900円となっています。リーマンショック直後に長野市で売れ残った分譲マンションの評価を担当したことがありますが、「長野ではオリンピックの時に建設された分譲並みの市営住宅があるので、民間の分譲貸しのマンションは人気がない」と言われたのを思い出します。
さて、2020年に開催される東京オリンピックですが、選手村は東京都中央区晴海5丁目に建設されることになっています。都営大江戸線「勝どき」駅から徒歩約10分、東京駅から直線距離で約3.5kmに位置しています。
先日、選手村の建設事業者に三井不動産等の11社グループが選定されており、2017年1月着工、2019年12月を目処に宿泊用の中層棟21棟と商業棟1棟を完成させる予定です。大会後の利用計画については、中層棟を賃貸・分譲マンションに改装するほか、さらに50階建の高層棟2棟を新設し、計約5,650戸の住宅を整備することになっています。東京都都市整備局によると、大会後の選手村(イメージ)はこんな感じです。
選手村周辺の勝どき、晴海、豊洲、有明といった湾岸エリアでは近年1,000戸以上の超高層タワーマンションの建設ラッシュで、再開発案件を含めると2015年から2020年までに9,000戸ほどの供給が予定されています。そこに選手村跡地に5,650戸が上乗せされるという…。もはやバブっているといわれる不動産業界、それでも東京オリンピックまでは大丈夫なんて言われ、最近ではオリンピックまで持たないなんて声も聞こえたりしています。建設事業者として応札したのは前記の1グループ(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、大和ハウス、東京建物等々)のみ、東京都が設定した最低価格(総額129億円、9.6万円/㎡、異常なまでに低価格?)での落札となっています。事業者としても相当な事業リスクとなるので、名だたる大手がジョイントして防御しているといった印象です。
今回はオリンピックで気になった選手村のその後について探ってみましたが、最後は不動産業界のバブル懸念に行きつくこととなりました(苦笑)。何はともあれ、東京オリンピックの成功を祈るばかりです。