皆様、こんにちは。朝と夜は少し過ごしやすくなったでしょうか。とはいえ、まだまだ日中は暑さが残るこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
さて、不動産鑑定士は様々な用途の不動産評価を行っているのですが、最近増えている用途のひとつに「老人ホーム」が挙げられます。高齢化社会の到来により「有料老人ホーム」や「サ高住」といった民間施設が増加していることが背景にあります。また、不動産オーナーが運営事業者に一括賃貸して収益化することで、投資用物件となっているケースも多く見られます。評価の場面では、運営事業者が事業収支をもとにどこまでの賃料を負担できるかを適正に分析し査定することがポイントになるのですが、その入り口にあるのが、将来の人口や高齢化率に関する分析になります。少子高齢化、人口減少への対応が課題となっていますが、地域ごとにみると状況は様々です。
今回は大阪市内24区について、将来の人口、高齢化の推移について概観してみたいと思います(前回はダイヤモンド街区の過去を辿ったので、今回は未来へ…)。
将来人口については、厚生労働省に所属する国立の研究機関として「国立社会保障・人口問題研究所」があり、分析結果をホームページで公表しています。(http://www.ipss.go.jp/index.asp)今回はこの中の市区町村データ(平成25年3月推計)より、大阪市内24区のデータを取り上げ、2010年から2040年の推移を見てみたいと思います。
まずは総人口の推移(表1)。全国では2010年で1.28億人が、2040年に1.07億人まで減少します。指数(表2)でいうと、2010年を100として83.8となります。大阪市全体の指数をみると、2040年は86.0です。区別の指数をみると、トップ3は北区110.4、次いで天王寺区109.3、さらに西区107.4となります。4位の鶴見区は101.4で微増、5位の城東区は95.1で減少となります。24区のうち、増加するのは4区のみ、残り20区で人口が減少すると推計されています。トップの北区でも、2020年以降の伸び率は僅かで、2035年から2040年にかけては減少に転じています。一方、ワースト3を見ると最下位は西成区で、なんと54.4となっています。次いで大正区69.0、住之江区74.8となります。西成区はあまり人気が無いという印象は皆さんもお持ちかと思いますが、減少度合いが際立っていますね。
<表1> 総人口
<表2> 総人口・指数
次に高齢者数の推移(表3)とその指数(表4)です。高齢者とは65歳以上を指しています。全国では2010年の2千9百万人から2040年には3千8百万人まで増加、指数では131.2となります。大阪市全体では指数が134.0で全国よりやや大きい程度ですが、各区の指標をみるとかなりばらつきが見られます。高齢者数の伸び率のトップは西区で指数は224.5、次いで中央区が191.2、天王寺区が186.5、北区が178.8と続きます。総人口が増加する北区、西区、天王寺区ですが、高齢者の増加率は大きい(現在の生産年齢が高齢者に移行する)ことが分かります。反対に高齢者数の伸び率が小さいのは西成区67.4、港区107.1、生野区110.0、大正区111.5となっており、いずれも総人口の減少が大きい区であることがわかります。高齢者数自体も大きく減少している西成区は、この中でも先を行っているという印象です。
総人口と高齢者人口から高齢化率(表5)を作成してみると、全国では2010年の23.0%から2040年には36.1%、大阪市全体も概ね同水準にあります。2010年で高齢化率が低いのは西区15.2%、中央区16.8%、北区18.7%、高いのは西成区34.3%、生野区27.1%、旭区26.3%となっています。2040年には全ての区で30%超となり、低い区で30%を少し超える水準、高い区は40%を超えます。
今回は大阪市各区の将来推計人口、高齢化の進み方を見てみましたが、いかがでしょうか。皆さんのお住まいの自治体はどうなっているでしょうか。気になる方は前記リンク先からダウンロードできますので確認して下さいね。不動産鑑定士は日頃から不動産価格に影響を及ぼす一般的要因、地域要因としてこういった数値を確認し、分析しています。最後に、2040年というと自分の年齢は…。なかなかの衝撃ですね(笑)。
<表3>高齢者数
<表4>高齢者数・指数
<表5>高齢化率